名言・格言『金子みすずさんの詩』一覧
見返りのない優しさって考えて出てくるものではありませんが。無い物ねだりで、どうすればいいのだろうと考え込んでしまいます。きっと、そうではないとわかっているのに。。
そんな時、金子みすずさん(山口県出身)ってどんな人なのだろうと詩に想いを馳せるのです。
以下、気になる言葉(詩)になります。やさしい気持ちになれると幸いです。
※「詩のはじまりは、神さまへのおいのりだった(『詩のはなし』巽聖歌・文より)」という言葉があります。みすずさんの詩には強い祈りを感じます。
好奇心に、こちょこちょ。 | labo気になる言葉(名言・格言・ことわざ) | wordsof
- 【 作品目次 】
- わたしと小鳥と鈴と、お魚、大漁、土と草、草の名、しば草、木、土、まゆとはか、つもった雪、春の朝、足ぶみ、なかなおり、ふうせん、はだし、もういいの、あさがお、もくせい、どんぐり、あした、みんなをすきに、おかし、わたしのかみの、さかむけ、あるとき、たもと、しかられるにいさん、いぬ、おひる休み、くれがた、だいだいの花、だるまおくり、つゆ、木、わらい、はちと神さま、げんげの葉のうた、げんげ畑、朝顔のつる、夕顔、みこし、石ころ、不思議、次からつぎへ、星とたんぽぽ、茶わんとおはし、なしのしん、こよみと時計、ゆめとうつつ、だれがほんとを、こだまでしょうか、こころ、すなの王国、美しい町、しょうじ、ぬかるみ、花のたましい、雪、日の光、このみち、明るい方へ
わたしと小鳥と鈴と
わたしが両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥はわたしのように、
地面(じべた)をはやくは走れない。
わたしがからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴はわたしのように、
たくさんなうたは知らないよ。
鈴と、小鳥と、それからわたし、
みんなちがって、みんないい。
お魚
海の魚はかわいそう。
お米は人につくられる、
牛はまき場でかわれている、
こいもお池でふをもらう。
けれども海のお魚は
なんにも世話にならないし
いたずら一つしないのに
こうしてわたしに食べられる。
ほんとに魚はかわいそう。
大漁(たいりょう)
朝やけ小やけだ
大漁だ
大ばいわしの
大漁だ。
浜はまつりの
ようだけど
海のなかでは
何万の
いわしのとむらい
するだろう。
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土と草
かあさん知らぬ
草の子を、
なん千万の
草の子を、
土はひとりで
育てます。
草があおあお
しげったら、
土はかくれて
しまうのに。
草の名
人の知っている草の名は、
わたしはちっとも知らないの。
人の知らない草の名を、
わたしはいくつも知ってるの。
それはわたしがつけたのよ、
すきな草にはすきな名を。
人の知っている草の名も、
どうせだれかがつけたのよ。
ほんとの名まえを知ってるは、
空のお日さまばかりなの。
だからわたしはよんでるの、
わたしばかりでよんでるの。
しば草
名はしば草というけれど、
その名をよんだことはない。
それはほんとにつまらない、
みじかいくせに、そこらじゅう、
みちの上まではみ出して、
力いっぱいりきんでも、
とてもぬけない、強い草。
げんげはあかい花がさく、
すみれは葉までやさしいよ。
かんざし草はかんざしに、
京びななんかは笛になる。
けれどももしか原っぱが、
そんな草たちばかしなら、
あそびつかれたわたしらは、
どこへこしかけ、どこへねよう。
青い、じょうぶな、やわらかな、
たのしいねどこよ、しば草よ。
木
お花がちって、
実がうれて、
その実が落ちて
葉が落ちて、
それから芽が出て
花がさく。
そうして何べん
まわったら、
この木はご用が
すむかしら。
土
こッつん こッつん
ぶたれる土は
よい畑になって
よい麦生むよ。
朝から晩まで
ふまれる土は
よい道になって
車を通すよ。
ぶたれぬ土は
ふまれぬ土は
いらない土か。
いえいえそれは
名のない草の
お宿をするよ。
まゆとはか
かいこはまゆに
はいります、
きゅうくつそうな
あのまゆに。
けれどかいこは
うれしかろ、
ちょうちょになって
とべるのよ。
人はおはかへ
はいります、
暗いさみしい
あのはかへ。
そしていい子は
はねがはえ、
天使になって
とべるのよ。
つもった雪
上の雪
さむかろな。
つめたい月がさしていて。
下の雪
重かろな。
何百人ものせていて。
中の雪
さみしかろな。
空も地面(じべた)もみえないで。
春の朝
すずめがなくな、
いいひよりだな、
うっとり、うっとり
ねむいな。
上のまぶたはあこうか、
下のまぶたはまァだよ、
うっとり、うっとり
ねむいな。
足ぶみ
わらびみたよな雲が出て、
空には春がきましたよ。
ひとりで青空みていたら、
ひとりで足ぶみしましたよ。
ひとりで足ぶみしていたら、
ひとりでわらえてきましたよ。
ひとりでわらってしていたら、
だれかがわらってきましたよ。
からたちかきねが芽をふいて、
小みちにも春がきましたよ。
なかなおり
げんげのあぜみち、春がすみ、
むこうにあの子が立っていた。
あの子はげんげを持っていた、
わたしもげんげをつんでいた。
あの子がわらう、と、気がつけば、
わたしも知らずにわらってた。
げんげのあぜみち、春がすみ、
ピイチクひばりがないていた。
ふうせん
ふうせん持った子が
そばにいて、
わたしが持っているようでした。
ぴい、とどこぞで
ふえがなる、
まつりのあとのうらどおり、
あかいふうせん、
昼の月、
春のお空にありました。
ふうせん持った子が
行っちゃって、
すこしさみしくなりました。
はだし
土がくろくて、ぬれていて、
はだしの足がきれいだな。
名まえも知らぬねえさんが、
はなおはすげてくれたけど。
もういいの
−もういいの。
−まあだだよ。
びわの木の下と、
ぼたんのかげで、
かくれんぼうの子ども。
−もういいの。
−まあだだよ。
びわの木のえだと、
青い実のなかで、
小鳥と、びわと。
−もういいの。
−まあだだよ。
お空のそとと、
黒い土のなかで、
夏と、春と。
あさがお
青いあさがおあっち向いてさいた、
白いあさがおこっち向いてさいた。
ひとつの蜂(はち)が、
ふたつの花に。
ひとつのお日が、
ふたつの花に。
青いあさがおあっち向いてしぼむ、
白いあさがおこっち向いてしぼむ。
それでおしまい、
はい、さようなら。
もくせい
もくせいのにおいが
庭いっぱい。
おもての風が、
ご門のとこで、
はいろか、やめよか、
そうだんしていた。
どんぐり
どんぐり山で
どんぐりひろて、
おぼうしにいれて、
前かけにいれて、
お山をおりりゃ、
おぼうしがじゃまよ、
すべればこわい、
どんぐりすてて
おぼうしをかぶる。
お山を出たら
野は花ざかり、
お花をつめば、
前かけじゃまよ
とうとうどんぐり
みんなすてる。
あした
まちであった
かあさんと子ども
ちらと聞いたは
「あした」
まちのはては
夕やけ小やけ、
春の近さも
知れる日。
なぜかわたしも
うれしくなって
思ってきたは
「あした」
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みんなをすきに
わたしはすきになりたいな、
何でもかんでもみいんな。
ねぎも、トマトも、おさかなも、
のこらずすきになりたいな。
うちのおかずは、みいんな、
かあさまがおつくりなったもの。
わたしはすきになりたいな、
だれでもかれでもみいんな。
お医者さんでも、からすでも、
のこらずすきになりたいな。
世界のものはみィんな、
神さまがおつくりなったもの。
おかし
いたづらに一つかくした
弟のおかし。
食べるもんかと思ってて、
食べてしまった
一つのおかし。
かあさんが二つッていったら、
どうしよう。
おいてみて
とってみてまたおいてみて、
それでも弟が来ないから、
食べてしまった、
二つめのおかし。
にがいおかし、
かなしいおかし。
わたしのかみの
わたしのかみの光るのは、
いつもかあさま、なでるから。
わたしのお鼻のひくいのは、
いつもわたしが鳴らすから。
わたしのエプロンの白いのは、
いつもかあさま、あらうから。
わたしのお色の黒いのは、
わたしがいりまめ食べるから。
さかむけ
なめても、すっても、まだいたむ
べにさし指のさかむけよ。
おもいだす、
おもいだす、
いつだかねえやにきいたこと。
「指にさかむけできる子は、
親のいうこときかぬ子よ。」
おとつい、すねてないたっけ、
きのうも、お使いしなかった。
かあさんにあやまりゃ、
なおろうか。
あるとき
お家のみえる角へきて、
おもいだしたの、あのことを。
わたしはもっと、ながいこと、
すねていなけりゃいけないの。
だって、かあさんはいったのよ。
「ばんまでそうしておいで」って。
だのに、みんながよびにきて、
わすれてとんで出ちゃったの。
なんだかきまりが悪いけど、
でもいいわ、
ほんとはきげんのいいほうが、
きっとかあさんはすきだから。
たもと
たもとのゆかたは
うれしいな
よそゆきみたいな気がするよ。
夕がおの
花の明るい背戸(せど)へ出て
そっとおどりのまねをする。
とん、と、たたいて、手を入れて
たれか来たか、と、ちょいと見る。
あいのにおいの新しい
ゆかたのたもとは
うれしいな。
しかられるにいさん
にいさんがしかられるので、
さっきからわたしはここで、
そでなしのあかい小ひもを、
むすんだり、といたりしている。
それだのに、うらの原では、
さっきからうしろ取りしている、
ときどきはとびもないてる。
いぬ
うちのだりあのさいた日に、
酒屋のクロは死にました。
おもてであそぶわたしらを、
いつでも、おこるおばさんが、
おろおろないておりました。
その日、学校(がっこ)でそのことを
おもしろそうに、話してて、
ふっとさみしくなりました。
おひる休み
「しろ取りするもな みな来いよ。」
「ためおにするもな みな来いよ。」
あの組ゃ、いれてはくれまいし、
あの組ゃ、あの子が大将だし。
知らぬかおして、かたかげで、
地面(じべた)に汽車をかいている。
あの組ゃ、わかれてはじめたな、
あそこは、おにきめしているな。
なにか、びくびくしていたが、
みんなはじめてしまったら、
さわぎのなかに、うら山の
せみのなくのがきこえるよ。
くれがた
にいさん
口ぶえ
ふきだした。
わたしは
たもとを
かんでいた。
にいさん
口ぶえ
すぐやめた。
おもてに
こっそり
夜がきた。
だいだいの花
ないじゃくり
するたびに、
だいだいの花のにおいがしてきます。
いつからか、
すねてるに、
だれもさがしに来てくれず、
かべのあなから
つづいてる、
ありをみるのもあきました。
かべのなか、
くらのなか、
だれかのわらう声がして、
思いだしてはないじゃくる
そのたびに、
だいだいの、花のにおいがしてきます。
だるまおくり
白勝った、
白勝った。
そろって手をあげ
「ばんざあい」
赤組のほう見て
「ばんざあい」
だまってる
赤組よ、
秋のお昼の
日の光り、
土によごれて、ころがって、
赤いだるまがてられてる。
も一つと
先生がいうので
「ばんざあい。」
すこし小声になりました。
つゆ
だれにもいわずにおきましょう。
朝のお庭のすみっこで、
花がほろりとないたこと。
もしもうわさがひろがって
はちのお耳へ入ったら、
わるいことでもしたように、
みつをかえしにゆくでしょう。
木
小鳥は
小えだのてっぺんに、
子どもは
木かげのぶらんこに、
小ちゃな葉っぱは
芽のなかに。
あの木は、
あの木は、
うれしかろ。
わらい
それはきれいなばらいろで、
けしつぶよりかちいさくて、
こぼれて土に落ちたとき、
ぱっと花火がはじけるように、
おおきな花がひらくのよ。
もしもなみだがこぼれるように、
こんなわらいがこぼれたら、
どんなに、どんなに、きれいでしょう。
はちと神さま
はちはお花のなかに、
お花はお庭のなかに、
お庭は土べいのなかに、
土べいは町のなかに、
町は日本のなかに、
日本は世界のなかに、
世界は神さまのなかに。
そうして、そうして、神さまは、
小ちゃなはちのなかに。
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げんげの葉のうた
花はつまれて
どこへゆく
ここには青い空があり
うたうひばりがあるけれど
あのたのしげな旅びとの
風のゆくてが
おもわれる
花のつけ根をさぐってる
あのあいらしい手のなかに
わたしをつむ手は
ないかしら
げんげ畑
ちらほら花も
さいている、
げんげ畑が
すかれます。
やさしいめをした
黒牛に
ひかれてすきが
うごくとき、
花も葉っぱも
つぎつぎに、
黒い、重たい
土の下。
空じゃひばりが
ないてるに、
げんげ畑は
すかれます。
朝顔のつる
垣がひくうて
朝顔は、
どこへすがろと
さがしてる。
西も東も
みんなみて、
さがしあぐねて
かんがえる。
それでも
お日さまこいしゅうて、
きょうも一寸(いっすん)
またのびる。
のびろ、朝顔、
まっすぐに、
納屋のひさしが
もう近い。
夕顔
お空の星が
夕顔に、
さびしかないの、と
ききました。
おちちのいろの
夕顔は、
さびしかないわ、と
いいました。
お空の星は
それっきり、
すましてキラキラ
ひかります。
さびしくなった
夕顔は、
だんだん下を
むきました。
みこし
赤いちょうちんまだひがつかぬ、
秋のまつりの日ぐれがた。
遊びつかれてお家へもどりゃ、
おとうさんはお客さま、
おかあさんはいそがしい。
ふっとさびしい日ぐれがた、
うらの通りをあらしのように、
みこしのゆくのをききました。
石ころ
きのうは子どもを
ころばせて
きょうはお馬を
つまずかす。
あしたはたれが
とおるやら。
いなかのみちの
石ころは
赤い夕日に
けろりかん。
不思議
わたしは不思議でたまらない、
黒い雲からふる雨が、
銀にひかっていることが。
わたしは不思議でたまらない、
青いくわの葉たべている、
かいこが白くなることが。
わたしは不思議でたまらない、
たれもいじらぬ夕顔が、
ひとりでぱらりと開くのが。
わたしは不思議でたまらない、
たれにきいてもわらってて、
あたりまえだ、ということが。
次からつぎへ
月夜にかげふみしていると、
「もうおやすみと」とよびにくる。
(もっとあそぶといいのになあ。)
けれどかえってねていると、
いろんなゆめがみられるよ。
そしていいゆめみていると、
「さあ学校」とおこされる。
(学校がなければいいのになあ。)
けれど学校へでてみると、
おつれがあるから、おもしろい。
みなでしろ取りしていると、
お鐘が教場へおしこめる。
(お鐘がなければいいのになあ。)
けれどお話きいてると、
それはやっぱりおもしろい。
ほかの子どももそうかしら、
わたしのように、そうかしら。
星とたんぽぽ
青いお空のそこふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまでしずんでる、
昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
ちってすがれたたんぽぽの、
かわらのすきに、だァまって、
春がくるまでかくれてる、
つよいその根はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
茶わんとおはし
お正月でも
花ざかり、
わたしのべに絵のお茶わんは。
四月がきても
花さかぬ、
わたしのみどりのおはしには。
なしのしん
なしのしんはすてるもの、だから
しんまで食べる子は、けちんぼよ。
なしのしんはすてるもの、だから
そこらへほうる子、ずるい子よ。
なしのしんはすてるもの、だから
ごみばこへ入れる子、おりこうよ。
そこらへすてたなしのしん。
ありがやんやら、ひいてゆく。
「ずるい子ちゃん、ありがとよ。」
ごみばこへいれたなしのしん、
ごみ取りじいさん、取りに来て、
だまってごろごろひいてゆく。
こよみと時計
こよみがあるから
こよみをわすれて
こよみをながめちゃ、
四月だというよ。
こよみがなくても
こよみを知ってて
りこうな花は
四月にさくよ。
時計があるから
時計をわすれて
時計をながめちゃ、
四時だというよ。
時計がなくても
時間を知ってて
りこうなとりは
四時にはなくよ。
ゆめとうつつ
ゆめがほんとでほんとがゆめなら、
よかろうな。
ゆめじゃなんにも決まってないから、
よかろうな。
ひるまの次は、夜だってことも、
わたしが王女でないってことも、
お月さんは手ではとれないってことも、
ゆりのなかへははいれないってことも、
時計のはりは右へゆくってことも、
死んだ人たちゃいないってことも。
ほんとになんにも決まってないから、
よかろうな。
ときどきほんとをゆめにみたなら、
よかろうな。
だれがほんとを
だれがほんとをいうでしょう、
わたしのことを、わたしに。
よそのおばさんはほめたけど、
なんだかすこうしわらってた。
だれがほんとをいうでしょう、
花にきいたら首ふった。
それもそのはず、花たちは、
みんな、あんなにきれいだもの。
だれがほんとをいうでしょう、
小鳥にきいたらにげちゃった。
きっといけないことなのよ、
だから、いわずにとんだのよ。
だれがほんとをいうでしょう、
かあさんにきくのは、おかしいし、
(わたしは、かわいい、いい子なの、
それとも、おかしなおかおなの。)
だれがほんとをいうでしょう、
わたしのことを、わたしに。
こだまでしょうか
「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。
「ばか」っていうと
「ばか」っていう。
「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。
そうして、あとで
さみしくなって、
「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、
いいえ、だれでも。
こころ
おかあさまは
おとなで大きいけれど、
おかあさまの
おこころはちいさい。
だって、おかあさまはいいました、
ちいさいわたしでいっぱいだって。
わたしは子どもで
ちいさいけれど、
ちいさいわたしの
こころは大きい。
だって、大きいおかあさまで、
まだいっぱいにならないで、
いろんなことをおもうから。
すなの王国
わたしはいま
すなのお国の王様です。
お山と、谷と、野原と、川を、
思うとおりにかえてゆきます。
おとぎばなしの王様だって
自分のお国のお山や川を、
こんなにかえはしないでしょう。
わたしはいま
ほんとにえらい王様です。
美しい町
ふと思いだす、あの町の、
川のほとりの、赤い屋根、
そうして、青い大川の、
水の上には、白いほが、
しずかに、しずかに動いてた。
そうして、川岸(かし)の草の上、
わかい、絵かきのおじさんが、
ぼんやり、水をみつめてた。
そうして、わたしは何してた。
思いだせぬとおもったら、
それは、だれかにかりていた、
ご本のさし絵でありました。
しょうじ
おやのしょうじは、ビルディング。
しろいきれいな石づくり、
空までとどく十二階、
お部屋の数は四十八。
一つのへやにはえがいて、
あとのおへやはみんな空(から)。
四十七間のへやべやへ、
だれがはいってくるのやら。
ひとつひらいたあのまどを、
どんな子どもがのぞくやら。
−まどはいつだか、すねたとき、
指でわたしがあけたまど。
ひとり日ながにながめてりゃ、
そこからみえる青空が、
ちらりとかげになりました。
ぬかるみ
このうらまちの
ぬかるみに、
青いお空が
ありました。
とおく、とおく、
うつくしく、
すんだお空が
ありました。
このうらまちの
ぬかるみは、
深いお空で
ありました。
花のたましい
ちったお花のたましいは、
みほとけさまの花ぞのに、
ひとつのこらずうまれるの。
だって、お花はやさしくて、
おてんとさまがよぶときに、
ぱっとひらいて、ほほえんで、
ちょうちょにあまいみつをやり、
人にゃにおいをみなくれて、
風がおいでとよぶときに、
やはりすなおについてゆき、
なきがらさえも、ままごとの
ごはんになってくれるから。
雪
だれも知らない野のはてで
青い小鳥が死にました
さむいさむいくれがたに
そのなきがらをうめよとて
お空は雪をまきました
ふかくふかく音もなく
人は知らねど人里の
家もおともにたちました
しろいしろいかつぎ着て
やがてほのぼのあくる朝
空はみごとに晴れました
あおくあおくうつくしく
小さいきれいなたましいの
神さまのお国へゆくみちを
ひろくひろくあけようと
日の光
おてんと様のお使いが
そろって空をたちました。
みちで出会ったみなみ風、
(何しに、どこへ。)とききました。
ひとりは答えていいました。
(この「明るさ」を地にまくの、
みんながお仕事できるよう。)
ひとりはさもさもうれしそう。
(わたしはお花をさかせるの、
世界をたのしくするために。)
ひとりはやさしく、おとなしく、
(わたしはきよいたましいの、
のぼるそり橋かけるのよ。)
のこったひとりはさみしそう。
(わたしは「かげ」をつくるため、
やっぱり一しょにまいります。)
このみち
このみちのさきには、
大きな森があろうよ。
ひとりぼっちの榎(えのき)よ、
このみちをゆこうよ。
このみちのさきには、
大きな海があろうよ。
はす池のかえろうよ、
このみちをゆこうよ。
このみちのさきには、
大きな都があろうよ。
さびしそうなかかしよ、
このみちを行こうよ。
このみちのさきには、
なにかなにかあろうよ。
みんなでみんなで行こうよ、
このみちをゆこうよ。
明るい方へ
明るい方へ
明るい方へ。
一つの葉でも
陽のもるとこへ。
やぶかげの草は。
明るい方へ
明るい方へ。
はねはこげよと
灯のあるとこへ。
夜とぶ虫は。
明るい方へ
明るい方へ。
一分もひろく
日のさすとこへ。
都会(まち)に住む子らは。
2010/11/04
※誤字脱字あったら、金子 みすずさん すみません。
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【教育】慎み深いこと(謙遜)